「クラウドの行き先」という名の昔話

昔、私が学生時代にアルバイトでとあるベンチャーで働いていたときのこと。

私は、そんな若造の頃に、企画・設計・実装・テスト・運用まで人通りやらせてもらえていた時期があります。元々は、MS Accessのインストラクターをやっていて、その時に、そのベンチャー経理部長さんが生徒としてやってきました。教えているうちに、「私ではよくわからないので、うちに来ませんか?」といわれて、なんか楽しそうだったのでふたつ返事で行きました(時給がよかったのと、来たいだけきていい、必要な本は全て会社が出す、と言われたら大学生であれば気持ちは傾きますよね)。

入った当初、その会社は30人くらいでした。私が大学院を卒業するころには、300人くらいになっていました。IT技術者としては、この会社にうまい具合に入れて本当によかったと思っています。なぜなら、会社が大きくなるたびに、どんどん新たなチャレンジが待っていたからです。

私が入社したのは、20才の時でしたから、かれこれ15年も前になりますが(書いていて、ショックを受ける)、その頃ノートパソコンといえばSHARPメビウスです。さて、着任したときに、そのはやりのMMX166MHzを積んだメビウスは、ネットワークに繋がれることもなく3台だけありました。私の仕事は、大きくなりつつある会社(この会社の多くを語るつもりはないのですが、たくさんのお客さんがいました。)の顧客データベースを作成することです。結構、サポートに力をいれている会社でもあったので、そのデータベースも含めてです。

最初、MS AccessでDBの設計、フォーム、レポートを作成していきました。正直、誰も教えてくれる人は居なくて、なにか問題があっても自分で解決していました。テストも使ってもらうユーザに頼むというようなことをしていました。作ればつくるほど、現場からのニーズは増えていき、どんどんコーディングしてリリースして、デバックしていました。しんどかったけど、作ればみんなが喜んでくれるからとても楽しかった。徹夜もしたけど、大学生の頃は平気だったしね。それまでは、手書きだったものがデータベース化されることで、必要なときに必要な情報がすぐに取得できるようになっていきます。で、MS Accessの良いところは、遅いところだと今は思っています。

さて、会社が大きくなってきます、当然お客様も増えていきます。ある時、事務員は3人でした。私は、MS Access 100MBを超えると、お話にならないくらい遅くなる(Jet データベースエンジンて、今の若い人はしらないだろうなあ)という現象に悩まされていました。そこで、MS SQLServerにしましょうと社長と営業部長に話したら、「いいよ」ってな具合にオーケーになります。MS Accessなら、電話番号の検索が遅くって事務員の人は、それなりに(待つという)仕事がありました。でも、MS SQLServerをもちいると、かなりのことでも結構早くなります。調子にのって、社内の主任レベルの方へヒアリングしに行って、業務フローの効率化を進めました。多分、手前味噌ですが効率はよくなった気がします。

その結果、一人当たりのできる仕事量は増えます。ひとりの事務員が、辞めました(クビとかでなくて、その方の夢を追いかけたいということでした)。で、追加人員は補充されませんでした。なぜなら、すでにひとりでも十分に回るようになっているからです。昔、3人雇われていたのは、とにかく忙しくて人が足りなかったからです。私が入社した頃は、顧客情報は全て紙ベースで、壁一面の大きな本棚に所狭しと並んでいて、事務員の方は頼まれたらそこからファイルを取り出す仕事もしており、これはかなりの重要な仕事になっていたわけです。

私のやったことは、それをキーボード叩くだけで誰でも取り出せるようにしたことです、しかも基本的に瞬時に。

で、クラウドクラウドによって、雇用は増えるのかなと思う今日この頃。

もしかすると、現代はある種の過渡期なのかもしれない。人間は、働かなくてもロボットが、ITが、人間が生きるための全てのことをやってくれるのかもしれない。でも、私は現代に住んでいて、雇用をもっと増やすIT技術ってなんだろうと思っています。